『天皇はなぜ万世一系なのか』

天皇はなぜ万世一系なのか (文春新書)

天皇はなぜ万世一系なのか (文春新書)

「あ、本郷(恵子)先生の旦那さんの本かな?」と思って思わず手に取った一冊。
本郷恵子先生の方も直接知っているわけではありませんが、お二人とも東大・史料編纂所の先生です。

すごくフランクな口調で、ときどきセルフツッコミも入ったりして、内容の割にはとても読みやすいです。
そして、本論とはちょっと外れるかもしれないのですが、第6章の「日本の権力をざっくり見ると…」の内容は目からウロコでした。
簡単にまとめると、

・「一君万民」を標榜する律令国家は班田の貸与の見返りとして納税させ、兵役を課す。これを行うために地方行政制度を確立させる。
・日本では官僚育成を行わない結果、荘園が増加。天皇権力も漸減し、貴族が台頭→世襲の確立。
・権力を世襲集合体が担った結果、江戸幕府に至るまで、トップの進退は「ぬるい」もの。中国皇帝のごとき責任を取った例はない。

日本史を、ざっくり通史+問題文から読み取る対策でひたすら乗り切ってきた身としては、「なるほど!」と目を輝かせて読んでしまいました。
ちなみにこの後、明治維新万世一系性が強調されて、日本国憲法で象徴となった結果、責任を取らない立場になったので今後ますます安泰だろうという流れが終章です。

さらに、まさに傍論ながら、こんな記述にも笑ってしまいました。

明法道律令そのものを教科書として、律令や法学一般を学ぶ学科です。(中略)律令が生まれた中国においては、儒教こそを君子の学問である、と考えました。法学を含めたその他については、学問としての価値を低いレベルでしか認めませんでした。その影響を受け、日本でも明法道が置かれなかったのです。
ううむ、法学はすべての学問の基礎にして帰結である、といばっている法学部の先生方に聞かせてあげたい、いいお話ですね。いやまあ、それはあくまで冗談として、そののち律令を運用しているうちに必要性が高まり、明法道は正式な学問として定立されました。

まあ、ノコメで。笑。