新約聖書(とアメリカ政治)

佐藤優氏の解説付きの新約聖書が新書で出ていたので、買って読んでみています。

新約聖書 1 (文春新書 774)

新約聖書 1 (文春新書 774)

新約聖書 2 (文春新書)

新約聖書 2 (文春新書)

氏の毀誉褒貶もなかなか定まらぬところですが、少なくとも(スパイもの大好き人間としてはw)、彼の本を「読み物」として読んでいる分には面白いです。「事実」「分析結果」として捉えたときにどうか、という話はあるみたいですけれど、少なくとも在露大使館や外務本省の分析官として勤務していた実績はあるわけで、彼の思考枠組み自体を知ることは少しは役に立つのではないでしょうか。
氏がキリスト教徒であることは、氏の著作を少し読んでいる方ならご存じでしょうが、もともと同志社大学神学部に進んだのは、(マルクス主義の観点から?)神学を否定しようと思ったからだったようです。それを、「そういう人の方がよいキリスト者になる」と言って合格させた教員の方もすごいと思いますが、論理立てがしっかりしている分、「真理」(という表現が適切かはわかりませんが、ここでは「キリスト教の立場からそうであるもの」、の術語として)を見出した後においては、その世界にすっと入っていくことができ、敬虔なキリスト者になれるということなのかもしれません。

前置きはともかく。
聖書って、読んでみたいなぁと漠然と思っていたのですが、さすがになかなか手にする機会もなく、ホテルの部屋に置いてあるのを見てパラパラめくるくらいでした。
先日、某書籍部に本を渉猟しにいったら、「佐藤優が解説している」「新書版の聖書が」置いてあったので、思わず購入してしまった次第です。それだけでなく、一緒に久保文明先生ほか『アメリカ政治』とかも買っているので、その辺の動機(=アメリカ行くにあたってそのバックグラウンドにあるところを少しでも理解したい)もあるわけですが(とてもじゃないけど時間的にそっちまで手が届かない。。)。
そもそもアメリカってPilgrim Fathersが始祖であるところ、pilgrimって「巡礼者」であるわけで、私の記憶とWikipediaが間違っていなければw、英国国教会からの分離派が「信教の自由」を求めて新天地にやってきたはずなので、その意味において合衆国における「信教の自由」を少なくとも日本国憲法におけるそれと一緒にしてはいけないのかな、と思います。大統領就任の宣誓も当然のように聖書に手を置きながら行うわけですから*1
もちろん、アメリカ合衆国憲法修正第1条では以下のとおり信教の自由を保障しています。

修正第1条
連邦議会は、国教を樹立し、若しくは信教上の自由な行為を禁止する法律を制定してはならない。また、言論若しくは出版の自由、又は人民が平穏に集会し、また苦痛の救済を求めるため政府に請願する権利を侵す法律を制定してはならない。(出典:アメリカ合衆国憲法 - Wikisource *2

とはいえ、上記のとおり歴史的・文化的背景の中で、実質的に修正1条が担保されているのかという疑問は、少なくとも私は長らく抱いています*3。アメリカにおけるキリスト教の位置づけというものは、一度しっかり考える価値はあるし、おそらく考えなくてはいけないことだと思っています。

アメリカ政治 新版 (有斐閣アルマ)

アメリカ政治 新版 (有斐閣アルマ)

*1:とはいえ、http://okwave.jp/qa/q4646957.htmlによれば、別に聖書を使わなければいけないわけではないようなので、自らの信ずるところに対して宣誓を述べればよい、ということなのかもしれません。当該ページのリンク先を(Wikipediaだけど)ちゃんと読む必要がありそうです。

*2:原文は"Congress shall make no law respecting an establishment of religion, or prohibiting the free exercise thereof; or abridging the freedom of speech, or of the press; or the right of the people peaceably to assemble, and to petition the Government for a redress of grievances." ちなみにこれはもともと権利章典(Bill of Rights)の第「3」条であるところがまた面白い。第1条(国勢調査人口による下院議員定数の調整)は未成立で、第2条(議員報酬の改訂制限)は200年以上後の1992年に成立している。このへんの連邦と州の関係というのも、日本人にはなじみが薄いけど、興味深いところ。

*3:ダールのポリアーキー論におけるアメリカ批判しかり。wikipedia:米国愛国者法のときなど、イスラム教徒に対する扱いはひどかったのではなかろうか。