国立大学法人法の改正案

国会に提出されたようで、関係各位におかれてはおつかれさまでございます。
国立大学法人法の一部を改正する法律案:文部科学省

「指定国立大学」(旧称?「特定研究大学」)だけの話かと思ったら、資金運用に関しては各法人(ただし文科大臣の認可が必要)にも解禁のようですね。遊休土地建物の貸し付けも可能になります(要財務大臣協議ですが…)。

以下、技術的部分は省略しつつ条ごとに見てみます(単に「大臣」とあるのは文科大臣を指します)。

  • 9条(国立大学法人評価委員会)「大学の運営に関して高い識見を有する外国人」を委員に任命できることの明文化。指定国立大学は「世界最高水準の教育研究活動の展開が相当程度見込まれるもの」(34条の4第1項)で、中期目標の策定に際して「世界最高水準の教育研究活動を行う外国の大学の業務運営の状況を踏まえなければならない」(34条の6)ことから、評価委員会においても外国の大学の業務運営状況について知見のある外国人を加えることができる、ということでしょうか。
  • 34条の2(土地等の貸し付け)「現に使用されておらず、かつ、当面これらのために使用されることが予定されていないものを貸し付けることができる」とのことで、これまで減損処理されていたような土地建物を貸し付けることができるようになります(全法人*1対象、要大臣認可および財務大臣協議)。
  • 34条の3(余裕金の運用の認定)「運用を安全かつ効率的に行う」ことができるとの大臣認定を受けた上で、寄附金等を原資とする余裕金についての運用範囲が拡大されます(認定制度は全法人対象、指定国立大学は認定なしに運用可能(34条の7)。財務大臣協議不要)。詳細の指定は政令によるようですが、法律案を読む限りでは株式を除く有価証券(外国債等?)や投資一任契約が新たに対象となるようです。
  • 34条の4(指定国立大学法人の指定)「国立大学法人のうち、当該国立大学法人に係る教育研究上の実績、管理運営体制及び財政基盤を総合的に勘案して、世界最高水準の教育研究活動の展開が相当程度見込まれるもの」について、評価委員会の意見を聴いて大臣が指定。これにより、指定国立大学法人では以下の34条の5〜8の対象となります。
  • 34条の5(研究成果を活用する事業者への出資)「当該指定国立大学法人における研究の成果を活用する事業であって政令で定めるものを実施する者に対し、出資を行うことができる」ということで、大学発ベンチャーに直接出資が可能になるという規定でしょうか。なお、この出資に際しては大臣認可および財務大臣協議が必要です。
  • 34条の6(中期目標に関する特例)9条でも触れましたが、大臣は「指定国立大学法人の中期目標を定め、又はこれを変更するに当たっては、世界最高水準の教育研究活動を行う外国の大学の業務運営の状況を踏まえなければならない」とのこと。趣旨はわかりますが、実際にどう運用するのでしょうか。たぶん指定国立大学法人自らが「踏まえている」というエビデンスを提出するんでしょうね。
  • 34条の7(余裕金の運用の認定の特例)34条の3で触れたとおり、指定国立大学法人では同条による認定なしに余裕金の運用が可能となります。
  • 34条の8(役職員の報酬、給与等の特例等)役員・教員*2の報酬・給与等について、「世界最高水準の高度の専門的な知識及び経験を活用して遂行することが特に必要とされる業務に従事するもの*3について国際的に卓越した能力を有する人材を確保する必要性」を勘案した上で報酬・給与等を支給できるようになるほか、教員の「給与その他の処遇については、当該職員が行う教育研究の内容及び成果についての国際的評価を勘案して行うものとする」とのこと。要するにトップレベル研究者を引っ張ってくるにあたって給与を増やせるようにしようということと、教員の給与について教育研究の国際的評価を勘案しろ(「できる」ではなく「ものとする」)、ということですね。

34条の8については高度専門職についての規定はしないんかい、とちょっぴり思わなくもないですが、そもそもろくに定義もできていないですし、必要性も未知数ですからね…

*1:大学共同利用機関法人含む

*2:「指定国立大学法人の専ら教育研究に従事する職員」。以下本条の解説について同じ

*3:「者」じゃなくていいのか…? と思ったけど、対象をさらに特定する場合に「もの」を使う場合もあるんですね。「者」と「もの」との違いについて - 今日も重馬場 条文の読み方(その5)-者・物・もの | 出る杭はもっと出ろ!