サウジアラビアの奨学金削減がアメリカの大学に与える影響
Government cuts funding for students abroad - University World News
University World NewsでCNNの記事が転載されていました。
サウジの奨学金がすごくgenerousだという話は前にアメリカに滞在していたときに噂には聞いていました。
人づてなのでどこまで正確かはわかりませんが、授業料に加えて相当な額の生活費が支給されて*1、しかも手を上げれば誰でも行けるのだとか。
さすがに現地大学に受け入れてもらわねば仕方ないのですが、大学附設(ないし提携)の語学学校に通えばある程度の期間で大学/大学院レベルの英語力までには引き上げてもらえるので*2、応募時点で必ずしも語学力が伴っていなくても応募ができる…のだと思います*3。
昨年亡くなったアブドゥラ国王は先進的だったようで、こういう奨学金を整備したり、自分で大学を設立したり(King Abdullah University of Science & Technology | King Abdullah University)*4、石油が切れたあとのことも考えて人材育成に力を入れているのかなあ、と思っていました。
さすがのサウジもここまで原油価格が下がって財政が厳しくなると、支出削減に動かざるを得ないといったところでしょうか…
削減についてはともかく、こうした学生を受け入れる大学の立場から考えてみると、政府保証の財源付きで来てくれる「お得意様」、もっと露骨にいえばある種の「収入源」と捉えることができます。
実際、某大学の取り組みで、外国人留学生数を増やして州政府からの補助金の削減分をオフセットし、さらには独自財源だけで運営していけるようにしようというものを耳にしたこともあります。
特にアメリカの州立大学の場合は州内出身者かどうかで授業料が大きく異なる(ざっくり3倍程度の大学が多いように思います)ので、その意味でも留学生を増やすことは収入の増加につながります*5。
アメリカの大学の国際交流に関する基本的な統計であるOpen Doorsを見ると、2014/15年度のサウジからの留学生は6万人弱(留学生全体の6%。中国(31%)、インド(14%)、韓国(7%)に次ぐ4位)、前年度からの伸び率は11%となっています。4年前に語学学校で相当サウジ人の学生を見かけましたが*6、当時からさらに倍くらいに増えているようです。
もちろん、全体として上り調子なのでサウジが減ったとしても留学生数の増加トレンドは変わらないでしょうが、サウジに注力して留学生集めをしていた大学にとっては、奨学金削減の影響を大きく受ける可能性もあります。
日本の大学も、どうしてもアジア(特に中韓*7)偏重の傾向にはありますが、留学生数を増やすという意味でも、リスクヘッジの観点からも*8、もっと多角化を図っていく必要があるのかもしれません。
*1:「あいつらみんないい車に乗ってる」って話を聞いたこともあります。笑
*2:この場合、当該学校の一定レベルの修了をもって学部/院レベルの英語力があると自動的に認定してもらえる場合が多い
*3:さすがに具体的な応募要項とかは知らないので…
*4:なんでも、教育省に任せておくとイスラーム教の諸々に縛られて先進的な大学が作れないので、自分の力である種治外法権的な大学を作ってしまったやに聞いています
*5:一方、州立大学としての役割から、半分は州内の学生を入れておかなければ、という縛り?自主規制?もあるようですが
*6:サウジに注力している大学だったのかもしれませんが
*7:JASSO調査(2014)によればベトナムからの留学生も急増しているようですが
*8:特に外国政府派遣留学生が多い場合は