サウジアラビアの奨学金削減がアメリカの大学に与える影響

Government cuts funding for students abroad - University World News
University World NewsでCNNの記事が転載されていました。
サウジの奨学金がすごくgenerousだという話は前にアメリカに滞在していたときに噂には聞いていました。
人づてなのでどこまで正確かはわかりませんが、授業料に加えて相当な額の生活費が支給されて*1、しかも手を上げれば誰でも行けるのだとか。
さすがに現地大学に受け入れてもらわねば仕方ないのですが、大学附設(ないし提携)の語学学校に通えばある程度の期間で大学/大学院レベルの英語力までには引き上げてもらえるので*2、応募時点で必ずしも語学力が伴っていなくても応募ができる…のだと思います*3
昨年亡くなったアブドゥラ国王は先進的だったようで、こういう奨学金を整備したり、自分で大学を設立したり(King Abdullah University of Science & Technology | King Abdullah University*4、石油が切れたあとのことも考えて人材育成に力を入れているのかなあ、と思っていました。
さすがのサウジもここまで原油価格が下がって財政が厳しくなると、支出削減に動かざるを得ないといったところでしょうか…

削減についてはともかく、こうした学生を受け入れる大学の立場から考えてみると、政府保証の財源付きで来てくれる「お得意様」、もっと露骨にいえばある種の「収入源」と捉えることができます。
実際、某大学の取り組みで、外国人留学生数を増やして州政府からの補助金の削減分をオフセットし、さらには独自財源だけで運営していけるようにしようというものを耳にしたこともあります。
特にアメリカの州立大学の場合は州内出身者かどうかで授業料が大きく異なる(ざっくり3倍程度の大学が多いように思います)ので、その意味でも留学生を増やすことは収入の増加につながります*5

アメリカの大学の国際交流に関する基本的な統計であるOpen Doorsを見ると、2014/15年度のサウジからの留学生は6万人弱(留学生全体の6%。中国(31%)、インド(14%)、韓国(7%)に次ぐ4位)、前年度からの伸び率は11%となっています。4年前に語学学校で相当サウジ人の学生を見かけましたが*6、当時からさらに倍くらいに増えているようです。
もちろん、全体として上り調子なのでサウジが減ったとしても留学生数の増加トレンドは変わらないでしょうが、サウジに注力して留学生集めをしていた大学にとっては、奨学金削減の影響を大きく受ける可能性もあります。
日本の大学も、どうしてもアジア(特に中韓*7)偏重の傾向にはありますが、留学生数を増やすという意味でも、リスクヘッジの観点からも*8、もっと多角化を図っていく必要があるのかもしれません。

*1:「あいつらみんないい車に乗ってる」って話を聞いたこともあります。笑

*2:この場合、当該学校の一定レベルの修了をもって学部/院レベルの英語力があると自動的に認定してもらえる場合が多い

*3:さすがに具体的な応募要項とかは知らないので…

*4:なんでも、教育省に任せておくとイスラーム教の諸々に縛られて先進的な大学が作れないので、自分の力である種治外法権的な大学を作ってしまったやに聞いています

*5:一方、州立大学としての役割から、半分は州内の学生を入れておかなければ、という縛り?自主規制?もあるようですが

*6:サウジに注力している大学だったのかもしれませんが

*7:JASSO調査(2014)によればベトナムからの留学生も急増しているようですが

*8:特に外国政府派遣留学生が多い場合は

アメリカの大学院の中身(授業編・総論)

前回の続き。
秋セメスターは無謀なことに6コマも取っておりました。
大学院だと*11コマ3時間×15週で3単位(正確にはAcademic Senate Policyで1単位あたり40時間の学習量とされているらしく、15週3単位の場合は毎週2.5時間の授業と5.5時間の自習に相当するとのこと。8時間×15週=40時間×3単位ということですね。3時間のうちだいたい10〜15分の休憩を挟むので、ときどき早く終わることを加味しても少なくとも2.5時間の授業というのは確保されているように思います)が標準のようです。
で、6コマとなると、授業が18時間、自習の目安が33時間、合計で週の学習時間目安が51時間、土日含めて毎日休みなく勉強して1日7時間ちょっとということになりますw 週5だとすると、時間的には毎日2時間半残業するのに相当するでしょうか。大学院生なら言われんでもそのくらいは最低限やるでしょ、という話はありそうですが、どこまで行けば及第点なのかが全く見えない中で、しかも英語漬けでそれというのはなかなか厳しいところがありました…。相場観がわかっているからなのか、日本語だからなのか、はたまた一緒に仕事する相手がいるからなのかわかりませんが、毎日2時間半残業している方がよほど楽です*2

実際問題として5.5時間の自習というのには課題の文章を読む以上のことも期待されているのでしょうが、ノンネイティブからするとその時間でようやく課題を一通り読めるかどうかというところで、それすらも「効率的にこなして」どうにか予習が間に合う、という状況でした。
もちろん、いろんな課題が同時並行で迫ってくるわけでありまして、予習のほかにもプレゼンやったりペーパー書いたり、文字通り毎週のようにadditionalな出来事が起こります。ちょっとサボると本当に取り返しがつかなくなってしまうので、課題の締め切りは全部Googleカレンダーに突っ込んで、それと見比べながら、何曜日の午前中にはこの授業の予習して、午後はこれやって…という基本的なスケジュールをこなしつつ、とはいえ締め切りのある課題を最優先に終わらせていくというような、だいぶ綱渡りな3カ月半を過ごしていたように思います。

と、まあ、こう書くとノンネイティブだから大変なように見えますが、アメリカ人の学生からも6コマとかどうやって勉強してるんだ、とよく聞かれました*3。彼らは彼らなりに、きっちり深く予習してるからこその発言なのかなあ、という気もするのですが、TAやってるクラスメイトから、学部生は何十ページも予習してこいっていうと全然読んでこない*4、なんて話も聞いたので、実際のところはよくわかりません。

個別の授業については回を改めたいと思いますが、授業形式は思っていたほどにずっとディスカッションではない、というのは一つの発見でした。最初の授業とか、どうなることやら…と戦々恐々としていたのですが、歴史の授業だったこともあり、先生がずーっと話して(もちろん時折質疑応答は挟むのですが)3時間終了、という感じで、若干あっけにとられたくらいです。
もちろんそれは歴史の授業だからという部分はあるのですが、ほかの授業も徹頭徹尾ディスカッションということはまずなくて、ある程度導入の話をした上で小グループあるいはクラス全体でディスカッションをする、というパターンが多かったように思います。ただ、話が盛り上がると、もともと用意していたスライドを使わなかったり、授業の一部を後ろ倒しないしスキップしてでも学生同士のディスカッションを尊重するというのはどの先生にも共通した態度だったように思います。
もっとも、これは多くても25人くらいのクラスであるからこそできるわけで、学部にまでは一般化できないようにも思います。学部の授業は100人規模の教室でやっていることも多いように見受けられるので、そういう授業は(一部にはディスカッションも含まれるにせよ)いわゆるマスプロなのでしょう。おそらく学部でもゼミのような形で少人数クラスの機会は少なからずあるのだろうとは思いますが。

*1:少なくともうちのHigher Education Programでは

*2:ひょっとすると仕事の密度が低いんじゃねーかという話はあるかもしれませんが。。。

*3:とある教員からも、「6コマも取っていつ寝てんの?」と聞かれたことも。笑

*4:むろん学部生と院生では態度が違ってしかるべきなんですが

USPSの洗礼

アメリカあるあるの一つに、USPS*1にひどい目に遭わされた、というのがある気がします。
これまであまりトラブルになった記憶がないので、そんなのもあるんだなあ、と思っていたのですが、今日見事に(?)窓口氏とケンカする羽目になりましたw

本務先の先生に頼まれて、急ぎの書類を日本に送ることになってUSPSのGlobal Express Guaranteedという一番早いサービス(FedExを使って都内と近郊で2営業日、ほかの大多数の地域で3営業日、一部離島等で4日〜*2。しかし書類1枚送るだけで$76.25も取られる*3)を使おうとしたのですが、

1)日本語と英語の住所併記はダメだと言われて伝票書き直し(これはわからないでもないし仕方ない)
2)電話番号が必須だと言われて突き返される(これもまあしょうがない。とりあえず代替となる電話番号を書いておいた)
3)郵便番号が間違っているかサービス範囲外と言われて突き返される

一応、聞いてたのが違ったら困るなーと思って日本郵便のサイトで調べたけどやっぱり合っていて、コードブック的なもの(たぶんこのService Guide)をのぞくと、なぜか郵便番号が5桁で表記されてるんですね*4
で、日本の郵便番号は7桁だし、頭5桁とそれに対応する自治体名は合ってんだから頭5桁だけ入れて進めてよって言ったら、いや伝票に7桁書いてあんだろと言われ…。このまま5桁で入れろと言ってもらちがあかなさそうなので、どっかに頭5桁を使えって書いてないかと思って一度窓口をどいた上でService Guideを読んだら、日本の郵便番号はNNNNNNNの形式でこの番号が必要だって書いてある箇所があったので*5、「ほら7桁ってあるでしょ、とりあえず最初の5桁入れてよ」と言っても、「んなこと言われたってエラー出てるし私はわかんないわよ」「あんたが7桁書いててその7桁入れたらこのエラーが出てきたのよ、読んでみなさいよ!」と"The code entered is either invalid or out of service area"みたいなエラーを読まされ、ドヤ顔する受付氏。
正直この辺でぶち切れそうになったんですが、半分お仕事ということもあり、「じゃあ伝票直せば5桁で入力していただけますか*6?」と妥協して、どうにか受け付けてもらえました。

もうちょっと客対応よくしろよとか、融通聞かせろよと思うと同時に、このエラーの出し方は親切じゃないよなあ、とか、たしかにどこにもこの数字が頭の5桁であるとは明記されていないけどねえ、とか思いつつ、ジムで泳いで気持ちを落ち着かせたのでした。笑
しかし日本の何倍もお金取られてこれというのは、どうにかしてほしい。。
さすがに帰宅してからレシートにあったご意見窓口に一連の流れを書いて改善を求めましたねw


あと、今日たまたま気づいたのですが、USPSのトラックってナンバープレートがないようです。
ほかの政府機関(たとえばNational Park)の車ではU.S. Governmentのプレートがついているのをよく目にするのですが(極めつけは都内でそのプレートを見たことがあります。そのとき調べたことには、たしか地位協定の関係で米軍公用車両はそのまま日本国内を走っていいことになっているらしい、とか)、ググってもいまいちよくわからなかった…

*1:United States Postal Service。アメリカ合衆国郵政公社

*2:おそらく小笠原の11日が最長か?

*3:もっともEMS相当のPriority Mailでも$61.50〜。日本からアメリカへのEMSなら1200円〜なのに…。これでもFedEx直送よりはちょっと安いっぽい

*4:7桁全部入れたらすでに膨大なリストがさらにとんでもないことになっちゃうしね

*5:p.21

*6:Would you…?とやってみたw

アメリカの大学院のなかみ(イントロ)

秋セメスターは文字通り勉強に追われてほっとんどなにも書いていなかったのですが、春セメスターは秋ほどには忙しくないので、reflectionを兼ねていろいろ書いてみようかと思います(続くかわかんないけどw)。

いまアメリカの大学院で勉強しているわけなのですが、そもそもどんなことやるのよ?という方も多いと思うので、まずはどんなことをやっているかというところから書いてみたいと思います。
なお、筆者は日本の大学とアメリカの大学院しか知らないので、ちゃんとした日米比較はできませんのであしからず。

・合格通知(これより前の話は機会があったら書いてみたいと思います)
出願して無事合格となると合格通知が送られてきます(2〜3月頃)。筆者の場合は6校出願して合格2校、補欠候補1校(結局受からなかったけど)でした。日本とちがって偏差値順に並んでいる、というわけではないので、たとえばHarvardやMITに受かったけどUCLAには落ちた、なんていうことも普通にあると思います(ランキング同様、順位付けというのは難しいところですが、そもそも分野ごとに必ずHarvard>UCLAかというと、たぶんUCLAの方が強い分野もあるのではないかと思います。とはいえどこの大学が一番か、と聞かれるとやっぱりHarvardやMITの名前が挙がってくることが多いように思いますが)。
最初に来た1校(私立)からはいきなり分厚いレターが送られてきて、合格通知のレターやパンフレットなどが入っていました。今いるところからはまずメールでお知らせが来て、そのあと封書で合格通知のレターが到着。補欠のところはメールだけだったと思います。
格通知はあくまでお知らせなので、これを受けるかどうかというのを一定の期間内に返答しないといけません。返答の方法はさまざまなのでしょうが、いまの学校はWebで返答する方法でした。最終的にはGraduate Schoolがapproveするまで確定じゃないよ、なんて書かれていたので*1、よくわからないまま、とりあえず合格のステータス確定させなきゃ!と思って早々と返信してしまった気がします。笑
無事acceptされると、そのうちfull timeなのかpart timeにするのかという問い合わせが来て、5月くらいにはadvisor(要するに指導教員)が割り当てられる(うちのプログラムでは、少なくとも修士課程だと指名はできないとのこと。もっとも、うまくいかないとかもあるということか、advisorを変更するという手続きもあるようです)と同時に、履修科目とか相談してね、ということでした。幸いcampus visit時にclass visitしたときの先生だったので、向こうは覚えてないかもなー、と思いつつややフレンドリーに「こんな科目取ろうと思ってます」とメールを送ったら、「Adminのemphasis*2のままってことね、いいんじゃない? また8月(授業開始後)に会いましょう」とのことでした。

履修登録
どこの大学もそうなのかはわかりませんが(でも特段説明がなかったからたぶんそうなのかな)、履修登録は入学前から始まっています。って渡米後に知ってびっくりしたよ!
確認したら案の定必修の一つがすでに埋まっていましたが、さすがに必修なのでプログラムの担当職員にお願いして登録してもらいました。その流れの中でadvisorにまだ会ってないって言ったら「え、まだ会ってないの? 早く会って!」とびっくりされたので、アポを入れて授業開始の週に面談することに。
取りたいと思っていたもう一つの授業*3もfullだったものの、こちらは日本人の先輩*4に相談したら担当の先生に連絡を取ってくださって、入れることになりました(その後枠が空いたので無事登録)。
本当はComparative Educationとのdual degreeも取りたかったのですが、さすがにそれをやるととても時間が足りないと思われたので、やむなくあきらめることに。
で、ひととおり時間割組んだ上でadvisorのところに行ったら、「うん、あなたがそう決めたんならそれでいいと思うよ、履修要件満たしてるよね?」くらいな感じであっさり(もちろんほかの話もしましたけどね)。

オリエンテーション
この辺は過去の日記にも書きましたが、アメリカの場合はStudent Affairsがしっかりしていることもあるのか(あとは移民法の関係で留学生に講義すべきことが法定されていることもあるのでしょう)、オリエンテーションがずいぶんしっかりしています。おかげで授業開始前から留学生の友人は何人もできました(そして、このあたりから1年というか2セメスターで30単位取ることの無謀さに気づき始める…笑)

と、前置きだけでずいぶん長くなってしまったのでまずはこのあたりで。
次回は授業形式とかについて書こうかと思います。

*1:現在Legal Issues of Higher Educationという授業を履修していますが、その内容からすると、訴訟になったときに個々の教員やプログラムの不用意な発言によって大学が敗訴しないようにこういうことを書いているような気もします

*2:M.Ed. (Master of Education) in Higher Educationの中でAdministration、Student Affairs、Institutional Researchの3分野(emphasis)に別れてそれぞれ選択必修みたいなものが決まっているほか、希望があってadvisorが認めればそれに添わない履修もできるようです

*3:Educational Mobility in Comparative Perspective。思っていたのとはちょっと中身がちがったけど(international mobilityかと思い込んでたらsocial mobilityだった)、でも取ってよかった

*4:campus visitのときにお目にかかりました

国立大学理事に占める文部科学省関係者の比率

データ出典:国立大学法人・大学共同利用機関法人理事名簿:文部科学省(調査時点では平成27年8月26日現在。各大学ウェブサイトを補完的に参照)

論文を書きつつ、本当にMEXT枠の役員は各大学1人なのかと思って(そもそも東大の例外はあったにせよ)ふと調べてみました。

異動官職と思われる理事が54人、キャリアと思われる理事が16人(前職ベース+微妙な部分は過去の経歴から判断なので、もしかすると抜けや間違いがあるかも)。ちなみに事務局長なのは44/86(35/54と9/16でやや異動官職の方が比率が高いものの、いずれも6割前後)、なお副学長なのは22/70(17/54と5/16なのでどちらもほぼ3割)。
MEXT関係者が理事でない大学が16校もあるとはやや驚き(もっとも、鳥取みたいに「役員でない事務局長」の事例もあるので、実質的には精査するともうちょっと減るかも)。
なお鳥取鳥取県統括監を地域連携・内部統制担当の理事・副学長に採用しているようで、それも興味深いところ。
(リンク先では「鳥取大学統轄監」になってるけどね! あと東大の理事の名前にもtypoが…)
国家公務員経歴のある国立大学役員については過去の主要な経歴が公表されているので、その辺のキャリアパスを調べてみるというのも面白いかも、とは思います。

あと気づいたことなど:
・分掌のテキストマイニング(そもそもどんな分掌のカテゴリがあるのか、分掌業務相互間の関連性はどうか)というのも面白そう
・本務先?の大学の役員級を辞めてから他の大学で役員をやっている例が散見される
・政研大が学長以外役員全部非常勤ってのがすごく先進的…

夫婦別姓判決を読んでみる。

平成26年(オ)第1023号 損害賠償請求事件 平成27年12月16日 大法廷判決
夫婦別姓についての最高裁判決、報道はろくにチェックしてないけど、判旨は(結論の響きに比べると)夫婦別姓に好意的のように思われる。
それにしても、女性裁判官3名全員がそろって意見(理由付けは異なるが結論は同一。今回の場合、国家賠償法による損害賠償請求が主論点なので賠償義務はないという結論は同じであるものの、夫婦別姓については違憲とするもの)を述べているのがなんとも、というところ…。。(ところで、意見の場合は補足意見と違って一つの意見とすることができないんでしょうかね)。

なお多数意見は
・婚姻前の姓を保持する権利は憲法13条(幸福追求権)により保障される人格権ではないが、「氏を含めた婚姻及び家族に関する法制度の在り方を検討するに当たって考慮すべき人格的利益」ではあり、「憲法24条の認める立法裁量の範囲を超えるものであるか否かの検討に当たって考慮すべき事項である」
・「氏の選択に関し,これまでは夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている状況にあることに鑑みると,この現状が,夫婦となろうとする者双方の真に自由な選択の結果によるものかについて留意が求められるところであり,仮に,社会に存する差別的な意識や慣習による影響があるのであれば,その影響を排除して夫婦間に実質的な平等が保たれるように図ることは,憲法14条1項の趣旨に沿うもの」であり、上記同様、法制度の検討にあたって「憲法24条の認める立法裁量の範囲を超えるものであるか否かの検討に当たっても留意すべきもの」
としつつ、結論として家族が同一の氏を称することの合理性を述べて意見ではないとしているところ。

この判決で政府が積極的な行動をとることはないであろう点に鑑みれば、積極的に評価しすぎる気にはならないけれど、下記の通り夫婦同氏制のデメリットについて多数意見で比較的率直に触れているのは評価できる点と思う。

夫婦同氏制の下においては,婚姻に伴い,夫婦となろうとする者の一方は必ず氏を改めることになるところ,婚姻によって氏を改める者にとって,そのことによりいわゆるアイデンティティの喪失感を抱いたり,婚姻前の氏を使用する中で形成してきた個人の社会的な信用,評価,名誉感情等を維持することが困難になったりするなどの不利益を受ける場合があることは否定できない。そして,氏の選択に関し,夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている現状からすれば,妻となる女性が上記の不利益を受ける場合が多い状況が生じているものと推認できる。さらには,夫婦となろうとする者のいずれかがこれらの不利益を受けることを避けるために,あえて婚姻をしないという選択をする者が存在することもうかがわれる。

また、寺田補足意見の言う憲法適合性審査における裁判所の謙抑的な役割についても議論として首肯はできるところ。

本件で上告人らが主張するのは,氏を同じくする夫婦に加えて氏を異にする夫婦を法律上の存在として認めないのは不合理であるということであり,いわば法律関係のメニューに望ましい選択肢が用意されていないことの不当性を指摘し,現行制度の不備を強調するものであるが,このような主張について憲法適合性審査の中で裁判所が積極的な評価を与えることには,本質的な難しさがある。

諸条件につきよほど客観的に明らかといえる状況にある場合にはともかく,そうはいえない状況下においては,選択肢が設けられていないことの不合理を裁判の枠内で見いだすことは困難であり,むしろ,これを国民的議論,すなわち民主主義的なプロセスに委ねることによって合理的な仕組みの在り方を幅広く検討して決めるようにすることこそ,事の性格にふさわしい解決であるように思える。選択肢のありようが特定の少数者の習俗に係るというような,民主主義的プロセスによる公正な検討への期待を妨げるというべき事情も,ここでは見いだすに至らない。

なお、この点につきアメリカ連邦最高裁同性婚合憲判決(Obergefell v. Hodges)における反対意見(http://www.supremecourt.gov/opinions/14pdf/14-556_3204.pdf PDF40ページ目以降)を想起したのでこれについてもメモしておく。

But this Court is not a legislature. Whether same-sex marriage is a good idea should be of no concern to us. Under the Constitution, judges have power to say what the law is, not what it should be. The people who ratified the Constitution authorized courts to exercise “neither force nor will but merely judgment.” The Federalist No. 78, p. 465 (C. Rossiter ed. 1961) (A. Hamilton) (capitalization altered).

Today, however, the Court takes the extraordinary step of ordering every State to license and recognize same-sex marriage. Many people will rejoice at this decision, and I begrudge none their celebration. But for those who believe in a government of laws, not of men, the majority’s approach is deeply disheartening. Supporters of same-sex marriage have achieved considerable success persuading their fellow citizens—through the democratic process—to adopt their view. That ends today. Five lawyers have closed the debate and enacted their own vision of marriage as a matter of constitutional law. Stealing this issue from the people will for many cast a cloud over same-sex marriage, making a dramatic social change that much more difficult to accept.

Understand well what this dissent is about: It is not about whether, in my judgment, the institution of marriage should be changed to include same-sex couples. It is instead about whether, in our democratic republic, that decision should rest with the people acting through their elected representatives, or with five lawyers who happen to hold commissions authorizing them to resolve legal disputes according to law. The Constitution leaves no doubt about the answer.

近況報告

やっぱり授業が始まるとReading assignmentをこなすのに精一杯でありまして(18単位も取ろうとしているのがおかしいという話もある)、はてダを書いているどころではなかったのですが、とりあえず無事に生きております。
授業は月火の午後〜夜に各3時間×2コマ、木曜の朝〜午後に3時間×2コマ。
こんな感じの生活をしていました↓

月曜日 午前中は自室で木曜の予習。2コマに出て、図書館で復習していたらいつの間にか1時ごろになっていたので帰宅(図書館はエリア限定ながら授業期間中の日曜朝〜金曜24時まで連続開館)。
火曜日 午前中にadvisorとの面談があったのでそれに行ったあと図書館で予習。授業2コマ後はさらに予習して、月曜よりは早く帰ったか。
水曜日 午前中は自室で、お昼食べてから図書館で予習。飛ばしすぎたか疲れたので夕方で切り上げて自室でぐだぐだ。
木曜日 授業2コマ後、ようやく1週間が終わったと思って少しのんびり気分になりつつ、同窓会イベントに参加。その後学生限定のTargetの深夜開店イベントがあったのでそれに行ってみて、1時前帰宅。
金曜日 午前中は自室で、午後は図書館で予習。アメリカ人にならって?金曜の夜は勉強せずにWalmartと酒屋に出かけて昨日の買い残し等を調達して、帰宅後何かタンパク質を摂取しなきゃという気になったので(笑)日本料理屋さんでラーメン。アメリカであることを差し引くと上々か。
土曜日 午前中は休日、ということにして正午過ぎまでゴロゴロ。午後は自室で歴史の授業のcase paper用の文献読みをした後に、追加で必要な文献手配ついでに夕方から図書館でその授業の予習。日付が変わる前くらいに帰宅。
日曜日 11時過ぎに図書館に出勤(?)、木曜の予習とpaper書きの上、21時前に帰宅。

と、まあ、なんだかずいぶん勉強しております。今のところまだ本格的にWritingの課題が出てないからいいものの、これからどうなるやら、という感じではありますが。。
水曜はそんな勢いがピークだったのですが、木曜の2コマがどちらもすごく面白い(その分予習の負担も重い)ので、「週末」の勢いと合わせてややハイテンションになったものの、週末に膨大な予習量を改めて目の前にしてまた落胆するという感じです。笑