「損益外減価償却累計額」ってなんぞや

国立大学法人会計基準(以下、単に「会計基準」といいます。)には、「損益外減価償却累計額」という概念があります(たぶん独立行政法人会計基準でも同じだと思います)。
会計基準からの引用については以下に示しますが、簡単に言うと
「儲けのために使わない固定資産については減価償却相当額を計上しません。その代わりに資本剰余金を減額して、その中に『損益外減価償却累計額』という項を設けて、減価償却累計額相当がいくらかはわかるようにしておきます。そこの部分は運営費交付金とは別に国が面倒見るべきところなので、国立大学法人の運営の責任外と考えてこういう扱いにします。ただ、附属病院で診療関係に使う部分については収入があるので、『儲けのために使う』と考えて減価償却を行います」
という感じでしょうか。

第84 特定の償却資産の減価に係る会計処理
国立大学法人等が保有する償却資産のうち、その減価に対応すべき収益の獲得が予定されないものとして特定された資産については、当該資産の減価償却相当額は、損益計算上の費用には計上せず、資本剰余金を減額することとする。(注62)

<注62> 減価償却の会計処理について
国立大学法人等が固定資産を取得するに当たっては、国は、国有財産の現物出資あるいは施設費の交付等を行うことができるものとされている。ところで、国立大学法人等は業務運営の財源を主に運営費交付金に依存することになるが、このような資産の減価部分については通常は運営費交付金の算定対象とはならず、また、運営費交付金に基づく収益以外の収益によって充当することも必ずしも予定されていない。更に資産の更新に当たっては、出資者たる国により改めて必要な措置が講じられることになるものと想定される。このような場合においては、減価償却に相当する額は、むしろ実質的には財産的基礎の減少と考えるべきであることから、損益計算上の費用には計上せず、国立大学法人等の資本剰余金を直接に減額することによって処理するものとする。この取扱いは、取得時までに別途特定された資産に限り行うものとする。
2 このような資産に係る減価償却相当額は、各期間に対応させるべき収益が存在するものではなく、また、国立大学法人等の運営責任という観点からも、その範囲外にあると考えることができる。これを損益計算上の費用としてとらえることは、国立大学法人等の運営状況の測定を誤らせることとなり、準用通則法44条を適用する上での計算方法として適当ではない。
貸借対照表の資本剰余金の区分においては、「第84 特定の償却資産の減価に係る会計処理」の規定に基づく損益外減価償却相当額の累計額を表示しなければならない。この累計額は、国立大学法人等の実質的な財産的基礎の減少の程度を表示し、当該資産の更新に係る情報提供の機能を果たすこととなる。
4 附属病院における一定の償却資産に係る減価償却については、当該減価に対応すべき附属病院収入の獲得が予定されていると考えられるため、当該収入をもって充当することが適当と考える。よって、附属病院における上記資産の減価償却相当額は、損益計算上の費用に計上し、それ以外については損益外減価償却を行うこととする。

(なお会計基準全体については次のリンク先をご参照ください。「国立大学法人会計基準」及び「国立大学法人会計基準注解」報告書

つまり、本当は設備更新とかで一定のお金が必要で、企業であればその分を留保しなければ設備更新に投資するキャッシュが不足してしまうんだけど、(診療とかの)収入獲得のために使う部分以外については国がきちんと面倒を見るので「費用」ということにはしないでおいてください。ただ、とりあえずいくら必要かだけちゃんと書いといてね、ということですね。

さて東大の場合この損益外減価償却累計額がいくらかというと、2012年度の財務諸表を見るに103,161百万円です。すなわち、1000億円です。今と同じ規模を維持するためには1000億投資していただかないといけないわけです。
これは累計額ですが、2012年度分の損益外減価償却額については、同じく財務諸表にある「国立大学法人等業務実施コスト計算書」に載っていて、10,982百万円。110億円ですね。毎年これだけの額を投資していかないと設備はぼろくなっていく一方であり、その累積が1000億積まれているということですね。

そしてこれ、さっきの現金の裏付けのない利益の2倍以上の額でもあります。
ここをどう解釈するかについては、会計基準をもう少し考えないといけません(そして私の知識もそろそろ限界でワケがわからなくなってきました…)。